大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(ネ)1181号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

被控訴人である住宅供給公社は、本件共同住宅を所有権を留保して分譲し、所有者として共用部分の維持管理を行う必要上、控訴人を含む全譲受人との間で、譲受人の費用負担において公社が右維持管理を行う旨約定していた。ところが、その後住宅金融公庫が方針を変更して一団地の譲受人の一部についても所有権留保長期分譲方式から所有権移転短期分譲方式への切替えを認めたため、当初予定していたところと異なり、一部の譲受人だけが右切替えによつて先に区分所有権を取得するという事態が生じた。そこで、住宅供給公社が右区分所有者らとともに管理規約を設定して管理組合による共同管理を行つたのに対し、区分所有権未取得者である控訴人が、(1)右共同管理を行うこと自体の違法、(2)区分所有権未取得者の一部の者の意思に反する公社の議決権行使の違法、(3)区分所有権未取得者を管理組合に加入させないことの違法などを主張したのが本件である。判決の結論は異論のないところであろうが、共同住宅の管理をめぐる紛争が増加している折なので、紹介することとした。

【判旨】

3 被控訴人公社の控訴人に対する契約上の義務の放棄ないしは債務不履行の存否

以上認定の事実によれば、被控訴人公社は、稲毛団地の住宅を分譲するにあたり控訴人を含む全譲受人との間で、共用部分等の維持管理は譲受人の費用負担において被控訴人公社が行う旨約定し、現実に被控訴人公社において右約定に基づく義務の履行として直接維持管理にあたつてきたが、もともと右約定の趣旨は、被控訴人公社がその責任において共用部分等を維持管理するということであつて、被控訴人公社が自ら直接他人を介さないで維持管理にあたらねばならないとする趣旨のものではないと解される上、昭和五三年八月三〇日住宅金融公庫の方針変更により、譲受人が代金完済前であつても残代金の支払にかえてその額に相当する被控訴人公社の金融公庫に対する債務を免責的に引受けたときは所有権を移転する取扱いとしたため、稲毛団地五二八戸中三〇二戸が右方式を受入れ住宅等の所有権を取得するに及び被控訴人公社は単独では稲毛団地共用部分等全体の維持管理をすることができず、区分所有者らと共同で行わなければならない事態となつたことにより、建物の区分所有等に関する法律二三条に従つて被控訴人公社を含めた区分所有者の間で管理規約を制定し区別所有者らを構成員とする管理組合を設立し共同で維持管理をすることにしたものであるから、被控訴人公社が管理組合に加入し、それに伴つて保管していた維持費を組合に移管しその一組合員として行動し、控訴人ら所有権未取得者のため共用部分等の維持管理にあたることは、分譲契約により所有権未取得者から委託された共用部分等の維持管理義務の履行に相当するものであり、このことは控訴人に対する契約上の管理義務の放棄にあたらかいことは勿論、債務不履行を構成するものでないことも明らかなところである。

4 管理組合における不当工事、不正支出及び差別扱いの有無

前記認定事実に照らせば、請求原因6の(一)の二〇一万円の支出は、総会の承認を得て着工し昭和五五年六月完工した上水道工事費の支払であつて、控訴人主張のような違法報酬を捻出するための架空の支出でないことは明らかであり、したがつて、被控訴人公社が粉飾経理を容認した旨の控訴人の主張はその前提を欠く。

同(二)の昭和五四年度施工の中央駐車場改装工事等も総会の承認を受けてなされたものであり、被控訴人公社が右承認の議決に加わつたことは前認定のとおりである。右工事は団地居住者共通の住環境にかかわるものであり、また、控訴人ら非組合員(所有権未取得者)もその工事費用を負担するものであるから、所有権未取得者は右工事施行に関し利害関係を有する立場にあるといえよう。そして、右の立場に対する配慮は、所有権未取得者の住宅等の区分所有者であり、その地位に基づき管理組合の組合員となつた被控訴人公社が工事承認に関する議決等に参加する機会に、当該議決権の行使を介して実現されるべきものであるが、被控訴人公社は、控訴人ら所有権未取得者の同意がない以上、右工事を承認する旨の議決権の行使をすべきでないとはいいえない。蓋し、多数の居住者のいる団地にあつて共用部分等の維持管理は居住者全体の共同の利益を保持増進するという目的に適合するようになされ、被控訴人公社の組合員としての行動もまたこれによつて律せられるべきものであるから、被控訴人公社は、住宅金融公庫に対する債務を引受け住宅の所有権を取得した短期分譲者や所有権未取得者で当該工事を要望している者の立場をも総合的に考慮して議決権を行使するのが当然であり、たとえ所有権未取得者の一部に工事の承認に同意しない者がいたとしても被控訴人公社が工事の必要性、規模、費用及び全体的な賛否の状況等に鑑み相当と判断して、その有する全議決権につき賛成投票をすることは許容されるところといわなければならない。それ故、仮に前記工事につき控訴人が同意していなかつたとしても(更に控訴人以外に不同意者がいたとしても、その数は若干名を出ないことは弁論の全趣旨から明らかである)、前認定の事実関係のもとにおいて被控訴人公社が相当と判断してその有する全議決権に基づき前記工事を承認したことはなんら違法ではないというべきである。

また、共用部分等を維持管理するため管理組合を設立し、組合員を区分所有者に限ることとし、控訴人のような所有権未取得者は、区分所有者たる被控訴人公社を介し間接に維持管理にかかわるものとするため、管理組合が所有権未取得者に組合員及び理事となる資格を与えないことには、何らの違法、不当の点は存せず、これをもつて不当な差別ということはできない。これに反する見地に立つ同(三)の主張は採用できない。

(蕪山厳 安國種彦 塩谷雄)

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